輻射熱の空調がすべて無風とは限らない!完全無風の空調とは?

最近、注目され始めた「輻射熱」による空調は、室温に加え、体感温度へも影響を及ぼす空調システムです。英訳すると、「Radiant heating and cooling」となります。

輻射熱による空調の種類は1つではなく、機能や仕組みによって様々なタイプがあるのをご存じでしょうか。

今回は、一般的な空調の種類と、F-CONのような「完全無風」空調の特徴をご説明いたします。

機能別に空調を分類

まず、一般的な空調の分類について、下図をご覧ください。

空調分類図

チェックポイントは2点あります。

  • 機能 →[冷房+暖房]か、[暖房のみ]か
  • 風の有無 →[送風あり]か、[無風]か

1つ目のポイントは、「冷房と暖房」両方の機能があるものと、「暖房」機能しかないものがあるということです。暖房のみの場合、当然ながら夏場の冷房設備として別の空調を導入する必要があります。

2つ目は、送風があるか、ないか(無風)ですが、「輻射熱による冷暖房 = 無風」のイメージを持っている方も多いかと思いますが、実は輻射熱による冷暖房のすべてが無風というわけではありません。

例えば、上の図にある「エアコン併用輻射空調」は、エアコンの送風を用いて輻射熱を拡散する、いわゆるエアコンの延長、もしくはオプション的な位置づけの設備ですが、一部のメーカーではこれを「無風感」や「風に頼らない」といった紛らわしい表現を用いて宣伝したりしています。

エアコン併用輻射空調

一方で、F-CONのように、輻射熱による完全無風の冷暖房もあり、「無風」と「無風感」は言葉にすると似たような印象を受けるものの、そこには大きな違いがありますので、混乱しないように注意が必要です。

特に「エアコン併用輻射空調」はシステム全体で見ると輻射熱で冷暖房する割合が全体の5~20%程度冷暖房能力のほとんどをエアコンに依存しており、海外ではこのような空調設備を「輻射式冷暖房」と呼ぶことはありません。

このように輻射熱による冷暖房の種類は送風の有無、仕組みによって様々です。詳しくはこちらをご覧ください。

風がないと空調できない?

そもそも、空調には風が必要だと思っている方が多いのではないでしょうか。

エアコンをはじめ空調の考え方として、「暑い(寒い)のでエアコンの温度を上げ(下げ)る」、つまり、「空気の温度を上げ下げしてコントロールする」というのが今までの常識でした。

快適性を判断する要素

「ここは気持ちいいな~。快適だな~。」人は何をもって快適性を判断しているのでしょうか。

温熱環境を構成する6つの要素

人が暑い(寒い)と感じるのは、環境側では温度、湿度、気流、輻射、人間側では代謝量、着衣量と6つの要素で総合的に判断しています。

人は必ずしも「温度」だけで暑い・寒いを判断しているわけではありません。

人が暑い寒いと感じる体感温度(作用温度)を簡易的にイメージしやすい方程式にすると、以下の方程式で表現できます。

これはある領域の条件ですが、方程式を見れば分かるように、体感温度は室温だけでなく、壁や天井の平均表面温度も大きく影響しているのです。

温熱環境の6要素と評価指標について、詳しくはこちらをご覧ください。

最近では人の体感温度についての研究が進み、室温だけでなく、建物の壁や天井や床など周辺の表面温度も温熱環境の設計で重要視されるようになりました。

無風の冷暖房って何?

新型コロナウイルスがエアコンの風にのって広がり感染したというニュースもあり、無風の輻射熱による冷暖房システムが注目されるようになりました。

しかし、”輻射”と言われてもあまりピンと来ない方も多いでしょう。”放射”という単語の方がよく耳にするかも知れません。

身近にある輻射熱

”輻射”と”放射”は同義語で、太陽の光が宇宙空間を通って地球に届き、地表を温めたり冷やしたりするのも輻射の影響です。輻射は空気がなくても熱を伝えることができます。

輻射の原理や特徴について、詳しくはこちらをご覧ください。

身近にある輻射熱の例

洞窟の中のひんやり感、冬の日なたのぽかぽか感、輻射熱はけっして特別なものではなく、普段の生活で何気なく自然に体感しているものです。

このように輻射という自然の原理を用いた冷暖房は、“自然”という言葉から想起されるヘルシーで優しいイメージにもフィットした空調設備と言えるでしょう。

風の出ない冷暖房システム F-CON

人の体感温度を調整する

F-CONは完全無風の冷暖房システムです。その仕組みは輻射パネルを室内に設置し、室外機と接続します。室内機と室外機の間に冷媒ガスを流すエアコンに対し、F-CONの場合は冷温水を流しています。

仕組みの違い

冷房時は冷水で輻射パネルを冷やし、室内(天井・壁・床)の熱を奪い、暖房時は温水で輻射パネルを温め、室内(天井・壁・床)を温めることで、人が暑い寒いと感じる体感温度を調整しています。

体感温度を調整

F-CONの効果を存分に引き出すためには、建築の温熱環境の設計とセットで考えることが必要不可欠で、建物の気密性や断熱性を高めて天井・床・壁面の表面温度を保ち、その上で輻射熱を用いて心地良い室内環境を整えていきます。

温熱環境設計について詳しくはこちらをご覧ください。

「F-CONはエアコンと併用する必要はありますか?」との質問をよく受けますが、弊社は温熱環境設計をしっかり行った上でF-CONを導入するため、エアコンは不要です。(ご予算の関係やリフォームの間取りの関係で、エアコンを併用する場合もあります。)

F-CONの特徴とメリット

F-CON導入によってもたらされる暮らしのメリットについてはこちらに詳しく載っていますのでご覧ください。

F-CONは新築でもリフォームでも

F-CONは新築でもリフォームでも導入が可能ですが、ぜひF-CONの導入を「家の設計段階(もしくは、設計前)」から検討いただきたいと思います。

家づくりの初期段階からF-CONの導入計画を進めていくメリットは、パネルの配置を考慮した間取りが組め、それを室内空間と一体化させられる点にあります。配管の取り回しや輻射パネル配置の自由度が高まり、よりベストなご提案につながります。

F-CONが不向きな場所もある

F-CONは戸建て、マンションだけでなく、体育館や病院、オフィスなど色々なところに導入されていますが、どんな建物でもOKというわけでなく、熱損失が多い場所や、湿度が高い場所には不向きです。

  • 湿度が高いエリアで気密性の悪い建物
  • 断熱がない建物
  • 鉄筋の建物で、熱橋(ヒートブリッジ)対策がなされていない建物
  • 天窓がある建物
  • 窓ガラスが多い建物
  • 火を使う調理場など
  • コンビニやオフィスのロビーなど人の出入りが頻繁で外気が多く侵入するところ
  • 焼き肉店をはじめとする換気回数が多い飲食店

上記のような場所にF-CONを導入する場合、ゾーニングを行い、エアコンや外調機を併用するなど、外部からの熱の処理を工夫したり、建築側の断熱や開口部対策が必要です。

まとめ

筆者である私もF-CONを導入したマンションに住んでいますが、暑い寒いのストレスフリー環境に満足しています。

多くのお客様にF-CONの素晴らしさ、快適な暮らしを体感していただきたい気持ちもありますが、F-CONはあくまでも1手段であり、家づくりにおいては快適かつ健康的な空間作りが一番重要だと考えております。

輻射熱による冷暖房というのは最近注目され始め、種類も多く、それぞれ特徴や仕組みも異なるのですが、情報量が少ないのが現状です。ですから、導入を検討されている方はしっかりとメーカーや商品を見極め、快適かつ健康的な暮らしを実現していただくことを願ってやみません。

弊社では無料でF-CONの体感会を開催しております。「輻射熱の空調ってどうなんだろう?」とちょっと興味がわいた方は、ぜひお近くのF-CON体感会に起こしください。

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