F-CON開発の軌跡 ~ 課題続出!性能試験の難しさ

2022年、大手電機メーカー、自動車メーカーで、品質管理や性能評価の虚偽に関するニュースが多く報道されました。

空調での性能試験に携わっている会社として、より厳密な実験や試験を目指そうと思うほど、奥が深く、試験環境の改善や創意工夫も必要で、試験の大変さはもちろん、現場の方々の努力を痛感しながらも、やはり、お客様にはしっかりしたデータ提供をしたいと改めて思っています。

今回は、弊社が行う輻射パネルの性能試験の様子と、ここに至るまでの困難な道のりをご紹介いたします。

輻射パネル性能試験の難しさ

輻射パネルを他のメーカーの商品と比較する時、「性能」は大きなポイントとなるでしょう。しかし、この性能を評価するための試験が非常に難しい、骨の折れる作業なのです。

輻射パネルの性能試験が難しい理由として、下記の3点が挙げられます。

  • パネルが入る、大型の環境試験室の確保
  • 性能を測定するためだけに必要な設備
  • 性能評価にかなり時間を要する

大型の環境試験室の確保

パネル性能試験を行うには温度や湿度を一定にコントロールできる部屋が必要で、このような部屋を環境試験室といいます。試験室内の中にパネルを設置し、温度や湿度を変えながら、パネルの性能を測定していきます。

現在は自社で環境試験室を保有していますが、自社で試験室を持つ前はこの性能試験を行うのに非常に苦労しました。

福岡県工業技術センターの環境試験室をお借りして試験を行っていたのですが、環境試験室の天井高が足らず、試験を行いたい輻射パネルを室内に設置できないため、やむなく小さなパネルの放熱検証に変更になったことがありました。この環境試験室も何千万円もするものです。

福岡県工業技術センターの環境試験室での性能試験の様子

しかし、サイズの小さいパネルの性能試験を行っただけで、試験完了というわけにはいきません。パネルの高さや幅、形状が違えば性能も異なります。また、パネルのサイズに性能が比例するわけではありません。ですから、弊社が開発した全種類のパネルについて性能を測定する必要がありました。

しかし、日本国内では大型の環境試験室を確保できず、その後、大型施設を求めて日本を飛び出し、タイにある環境試験室で性能試験を行うことになりました。

タイにある環境試験室

輻射パネルの性能評価は、パターンを変えながら細かいデータの取得を繰り返し、その後、複数パターンで比較を行いますので、期間としては最低でも1ヶ月ほどかかります。

その試験期間中、環境試験室を貸し切ることができる施設をタイ国内で探すのはとても大変で、これでは時間や費用がかさむだけでなく、製品改良のスピードも落ちてしまうという結論に至り、日本で輻射パネル専用の十分に天井高のある環境試験室を自社に建てることになったのです。

このような経緯をたどり、自社で環境試験室を保有することになったのですが、輻射パネルの性能を測定する環境作り1つとっても、その難しさをご理解頂けるでしょうか。

FUTAEDA株式会社の環境試験室での輻射パネルの実験風景

性能を測定するためだけに必要な設備の開発

温度や湿度を一定に制御できる環境試験室を手に入れただけでは、周辺環境が整っただけで、輻射パネルの効果や性能を測定できません。

性能を評価するには、輻射パネルに流れる「水の量」と「流れる水の温度」を常に一定にしてデータを取得せねばならず、様々な測定機器が必要でした。

具体的に言うと、1台の輻射パネルを試験するには、毎分 2ℓ~12ℓくらいの冷温水をパネルに流す必要があります。しかし、市販の家庭用ヒートポンプ式室外機を使用して冷温水を作り、機械のONとOFFを繰り返すだけでは、流れる水の温度を一定に保つことが出来ませんでした。使用する水の量が少ないため機械にかかる負荷が少なく、どうしても温度変化が生じてしまうからです。これでは性能評価に必要なデータを取得できません。

設備設計の専門家に助言を求めたところ、業務用の大きな機械で毎分 50ℓ以上の冷温水を作るならば、冷温水の温度を一定にコントロールしやすいが、家庭用ヒートポンプ式室外機といった小さな機械で水の温度を安定させるのは難しいのでは・・・とのことでした。さて、どうしたものか・・・

弊社オリジナル「性能試験用冷凍サイクル室外機システム」

弊社はこの問題を乗り越えるために、指定した温度でコントロールできるオリジナルの冷凍サイクル室外機システムを開発しました。

性能試験専用のオリジナル設備を開発するために”1年”という月日を費やし少量の水でも温度を一定に保つことに成功。やっとパネルの性能試験を行うまでにたどり着いたのです。

輻射パネル性能試験用の冷凍サイクル室外機システム

性能評価にはかなりの時間を要する

こうしてやっと輻射パネルの性能試験を実施できるようになったのですが、ここからがまた苦労の連続でした。

輻射パネルの冷暖房能力を決めるポイントは3つあります。

  1. パネルに流れる水温
  2. パネルに流れる水の量(流量)
  3. パネルが置かれている環境(温度、湿度、周辺温度)

下のグラフはパネル性能を測定したもの(=性能表)ですが、水温と流量によって能力が変わるのがお分かりいただけるでしょう。流量が多いと性能が右肩上がりのグラフになります。

輻射パネルと同じ冷温水を流す仕組みのFCU(ファンコイルユニット)の仕様表(冷房時)
室温が26℃、湿度50%の場合
※ハイフンより後の数字は、FCUの性能別の記号
※Δt=5℃と記載してありますが、輻射パネル場合は送風がないので、一定ではありません。

このような性能表を作成するためには、設置したパネルの室内条件や、冷温水の温度、流量を変えながら、複数パターンのデータを取得しなければなりません。

環境試験室へのパネルの搬入~取付~室内環境の維持、複数パターンのデータ取得を繰り返し、1台の輻射パネルの性能測定だけで、最低でも1週間~2週間、さらに、再現性のための確認まで含めると1か月はかかります。

F-CONはパネルサイズをバリエーション豊富に取り揃えています。これらすべて、サイズ違いのパネル1つ1つに対し、しっかり時間をかけて性能試験を行いました。また、新製品を開発した際は、性能試験だけで半年、じっくり丁寧に時間をかけて行っています。

輻射パネルの性能を正しく比較検討するために

他のメーカーの商品など複数の輻射パネルを比較・検討する際は、性能表示もしっかり確認することが非常に重要です。

しかし、エアコンと異なり、輻射パネルはJIS規格が規定されておらず、性能表示が実測値ではなく、独自規定による推定値だったり、非公表としているメーカーも残念ながら存在します。

専門家であれば、性能表示を見れば「この数値は理論的におかしい・・・」と気づくのですが、一般の人はその性能表示を信じ、見た目やデザイン性で決めてしまいがちで、こういったことが実際に導入してみたら「効き目が悪い」などの不満の声に繋がっているようです。

輻射パネルの性能評価について、詳しくはこちらをご覧ください。

弊社では、自社の環境試験室でより正確、かつ実環境に合わせた性能評価試験を行い、輻射パネルの性能向上に努めています。

おかげさまで、F-CONの確かな性能と快適性は高く評価され、住宅だけでなく、多くの企業で採用されています。

島津製作所様の施設にF-CON導入

島津製作所様は、先端分析、脳五感・革新バイオ、AI(人工知能)などの研究開発を推進し、オープンイノベーションによる新しい価値の創造と社会課題の解決を目指すため、けいはんなに新研究棟「SHIMADZUみらい共創ラボ」を設置(2020年10月)、同施設において、研究者や技術者の執務室(1,500㎡)とジムメッセ(300㎡)にF-CONを導入いただきました。

SHIMADZUみらい共創ラボの執務室とジムメッセ

研究者や技術者の方々が多くの時間を過ごす空間にF-CONが採用されたことは弊社にとって大きな誇りであり、ここから新たな価値が創り出され、世の中に発信されることを願ってやみません。

その他のF-CON導入実績についてはこちらをご覧ください。

まとめ

輻射熱による冷暖房は建築とセットで考えることが必須で、F-CONも商品単体の性能だけでなく、設計、施工といった工程も重要ですが、最近、品質管理や性能評価についての虚偽のニュースが絶えず、弊社がこれまで、どれだけ性能評価を重要視し、力を注いできたか、弊社の想いをお伝えしたく、今回は輻射パネルの性能試験についてご紹介しました。

輻射熱による冷暖房を検討する際は、デザインや価格といった見えやすい(表層的な)特徴を注視しがちですが、性能についてもしっかり見極めた上で、エアコンでは実現できない快適な暮らしをぜひとも手に入れていただきたいと思います。

F-CONはパネルのバリエーションが豊富で、お部屋の間取りやテイスト、ご予算に合った提案も可能です。

F-CONの仕組みや特徴など詳しくはこちらをご覧ください。

もしご興味がございましたら、お気軽にお問い合わせいただきますか、全国各地のモデルルームでF-CON無料体感会を開催しておりますので、ぜひお越しくださいませ。

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